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2005年 08月 02日
● むーざん、むーざん。
『シグルイ』でその血塗れの作風が我々の前にも鮮やかに蘇った南条氏の短編集。言うまでもなく『シグルイ』原作。 漫画ではまだ一試合目だが、今更繰り返すまでもないが十一組もカードがある血みどろ祭り。ざっとここで感想を述べていこう! 「無明逆流れ」 『シグルイ』のイメージが強いと思うが、岩本虎眼は曖昧にならないし、『シグルイ』はアレンジを相当きかせてある。ネタバレになるのでこのあたりで次へ。 「被虐の受太刀」 二十二名の剣士で最も変態度が高い剣士と、女流長刀名人の闘い。伊良子も霞む変態ぶりが生々しい。こういう奴はこうでもしないとリビドーを昇華できないのか、哀れよ喃。 「峰打ち不殺」 峰打ちじゃ、死にはせんの嘘くささに迫った一編。鉄棒で殴るんだからそら死ぬって。 「がま剣法」 蝦蟇功ではないけど、やっぱり蝦蟇は邪悪らしい。私にとって一番嫌いな剣士が出てきた。江戸時代のストーカーは日本刀を二本も腰にさしているんだからいやんなっちゃう! 「相打つ 獅子反敵」 現代社会でもありそうな小さな反目でも、江戸時代は死ぬまで斬り合うんだからいやんなっちゃう。決闘の理由が一番しょうもない試合。 「風車十字打ち」 忍者の命は二束三文の時代、それが江戸で御座ろう。陰謀が背後にあるプロットがよし! 「飛龍剣破れたり」 どうも南条氏は白皙の美男子が嫌いなようである。女とりあって死ぬまで斬り合うんだからほんと、たまったもんじゃないわ。 「疾風陣幕突き」 かなりトリッキーな勝利法。そして忠長はやはり暴虐である! 「身替わり試合」 あああああ、やっぱ世代ギャップですよ。 けど江戸じゃないから、こういうことにはならんけど、こういう心理状態で若者に対してやけにえばるいい大人は今もいます。 おそらくケンカふっかけたじいさんは今いるとしたら、某都知事みたいな人なんですよ、きっと。 「破幻の秘太刀」 考えるな、感じるんだ。とブルース・リーな執念で闘いに挑む剣士が颯爽としていてかっこいいんですよ。けど、リーなら勝つけどこれはそうじゃないんですよ。むーざん、むーざん。 「無惨卜伝流」 無惨と、ついています。これはもう無惨と言わずとも無惨な南条流がリミッターを外したということなのです。こんな短篇によくぞここまで悲劇をてんこもりにしたと思いますよ。 後味、最悪です。だがそれがいい。 「エピローグ」 試合が無事終わったところで……いや、全然無事じゃないんですがともかく、そこでようやくリアル・ナイトメアが訪れます。途中まではこれを『シグルイ』ペースで全部漫画にするのは無理があると思いましたが、ここまで描かないと駄目な作品なのでした。むーざん、むーざん♪ 結論: 私たちは江戸時代初期に生まれていないことと、侍として生きていないことと、主君が忠長でないことを感謝すべきだと思います。 トム・クルーズだのなんだのがサムライスピリッツだなんだ言おうが、反目やマゾ趣味や女の取り合いごときで死ぬまで斬り合うなんて、死狂い過ぎます。私には無理です! キレやすい若者、危険なゲーム脳なんて言うけれど、キレやすい侍や危険な武士道脳よりいいんですよ。せいぜい私たち若者はカッターナイフしか持てませんし、いくら都知事が暴虐だといってもデスマッチさせたりしません。 私たちは幸福の中に生きていることを、いまいちど認識すべきだと思います。 SFやホラーなんかである、こういうのって要するに御前真剣試合ですよね……。
by kizurizm
| 2005-08-02 23:27
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