その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2006年 01月 09日
● 『新選組』スペシャルを見ていてふと思ったのですが、幕末ものが生々しくて見ていられなくなったことを痛感しました。
昔はこんなことがなかったのですが、ふっと今と地続きな時代だと感じてしまったことが原因かと。不謹慎な気がして幕末の人間を評価したり、好き嫌いをどうこうできなくなってしまいました。太平洋戦争がテーマの同人誌を見てぎょっとした経験があるのですが(大変いい本ですが、コメディタッチだったので……)、それと同じ反応かとも思います。 幕末ロマンといえば、キレイに聞こえるけど、そういう美化していいものかなと。新選組の青春というのはあったかもしれないけど、洒落にならない部分も大きいんじゃないかな、とか。あと、幕末というのは奇妙な時代感覚があります。戦国と近代の混合物のような時代感覚で、戊辰戦争で生き肝を喰った話とかを読むとなんとも。 そういう話を読んでいると、自分のそう遠くない先祖も修羅場にいたのか……と思えてきて、とても敗者にもロマンがあったなんて思えなくなってきます。 美学を貫いて死ねたのは、土方らには腕もあれば地位もあったからでしょう。 いきなり敵兵に縛られて内臓を抉られて殺された藩士だの、生き延びたゆえに斗南で地獄を見た藩士だの、そういう無名戦士の生き方こそ知るべきかもなんて思ってしまうのです(『平太郎の戊辰戦争』はおすすめ)。多分、大多数の人間が動乱に放り込まれたらそういう生き死にをすることになるんだろうな。理想も美学もいいけれど、その下には無数の血肉と白骨があるわけだ。 日本人は、幕末をあまりにロマンチックにとらえすぎていたんじゃないかな。そういうのは海外にまで見聞されていたらしく、中国の人は、日本が中国に進出するまで明治の元勲を『水滸伝』の英雄みたいに理想的に語っていたというし、伊藤博文がアメリカで「明治維新は無血革命」と演説ぶったともいうけれども。確かに明治維新は成功した革命かもしれない。けど、そう言い切れるものかどうか。 史観の逆転で幕府側にも正義はあったと主張されるようになったのはいいとしても、どっちにせよ美化しすぎちゃいないかと思うわけです。もっとも美化しなければ、悲惨すぎて娯楽になんかならないかもしれないわけです。会津戦争のあと、会津藩士の死体は埋葬禁止されて放置されていたなんて、本当に悲惨すぎるしそこまでやる必要あったんだか(あるわけない!)。 こう思うのも、山風の『警視庁草紙』、『幻燈辻馬車』あたりの影響も大きいかな……死んで美学を完成させることができず、生きて泥水を啜った明治人の哀切です。
by kizurizm
| 2006-01-09 00:38
|
ファン申請 |
||