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2006年 01月 12日
● 『このミステリーがすごい』2004年度など、各所でおすすめになっている作品ですが、はっきり言います。私はこの作品は嫌いだし、ミステリだと思えません。どちらかといえばウジウジした恋愛小説です。一言で言うと、とても黴くさい作品です。
最後のどんでん返しは確かにおもしろいかもしれませんが、さほど意外でもないし、驚きもないし、大変読んでいて胸くそが悪い……。ネタバレになるので詳しく書きませんが、同じタイプで山田風太郎『太陽黒点』という作品があります。これは本当にラストで開いた口がふさがらない衝撃があるし、他の山風作品と同じくバッドエンドでも爽快感があります。でも、これにはない。 それに最後のどんでん返しに到るまでの冗長な長さと暗い雰囲気がつまらない。どんでん返しまでまったく盛り上がりがありませんから。その苦痛に耐えたラストがこれか、と憤りに似たものを覚えます。 あと主人公の貴族の娘が嫌いなタイプなんです。自分以外を低俗だと思いこんでメソメソウジウジしているだけの、世間知らずで甘ったれた女。確かにこういうタイプじゃないと話が成立しないのはわかるんだけど、女囚の悲惨な生活を見ていて話し相手にすらなっていても、自分が一番可哀相だと思っているあたり鼻持ちならない傲慢な印象を受けます。アンタの監獄とやらは、勝手にアンタが鍵をかけているんだと言ってやりたい。愛さえあればすべてが変わるはずもないのにね。 でも読んでいる間はそれなりにおもしろく思えたし、ヴィクトリア朝の雰囲気はよく出ていて、筆力もあるし取材はしっかりしている印象は受けました。そういう基礎力はあるので、要するに好みの問題でしょうね。エルロイやケッチャムの暗さは好きだけど、こういうのは勘弁してくれ、でした。 ● 前述の通りアン・ライスあたりが好きな女性には、このゴシックな雰囲気がいいのかもしれないとは思います。アン・ライスは、HOMOHOMOになる前は好きでした。『ヴァンパイア・レスタト』は傑作だと思います。これはひとえにレスタトの魅力ですね。 レスタトは、かの有名な映画化もされた『夜明けのヴァンパイア』(映画版『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』)で自分が悪逆非道に描かれたのにむっときて自伝を執筆しました、というのが『ヴァンパイア・レスタト』の設定です。レスタトが光ならルイは影、レスタトは不老不死の吸血鬼になったことにすっかり慣れて気に入ってしまい、ロックスターになるほどゴーゴーな、貴族のバカ息子です。一方ルイはそんなレスタトに吸血鬼にされ、様々な苦しみを覚えてもがいている。どっちが好きかと言われれば、不老不死の運命を逆に楽しむレスタトが断然私は好きです。でもルイタイプの人間から見れば、恬然としたレスタトみたいな人間はやっぱり迷惑なんだろうな……。そのあたりは、自分のバカさ加減とも絡めて反省すべきかもしれません。 最後に蛇足。アン・ライスの小説は、電車の中で読めるカバーして欲しいもんだ……。
by kizurizm
| 2006-01-12 23:51
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