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2005年 10月 10日
● 私は小心者で、小学生の頃は心霊写真集を見るだけで眠れなくなったくらいだが、なぜか今はそういうものがへっちゃらになっている。だからちっとやそっとでは動じない。カニバリズムだろうが惨殺だろうがどんとこい! そんな気持ちがあった。
しかし、そんな私をして、ケッチャムの『オフシーズン』は打ちのめした。 秋風の吹く海辺の避暑地に、都会から六人の男女が訪れる。彼らをある一族の目が狙っていた。食人族が彼らを容赦なく食らいつくす! という、ゾンビとホラーを活字にしたような作品だ。 不快、胸くそ悪い、気持ち悪い、恐い、おぞましい。 そんな気持ちが悪臭漂うカクテルのようになってぶわーっとこみあげてくる。吐き気がした。頭がぼーっとなってフラフラとそのあたりを歩き回る羽目になった。 なんなんだこれは。一から十まで不快だ。でも、この不快感を終えるには読むしかないので一気に読むしかない。まさしく地獄! なのに文体は流麗で詩的ですらある。シニカルで語彙が豊富で観察力に富んでいて示唆的でもある。 ケッチャムの巧みさは定石を外すところ。たとえば映画だったら主演女優は死なないだろうなという安心感があるけど、ケッチャムはそういうセオリーを全部外すのがきつい。これがガーンとまさしくショックだ。 このあとだから『地下室の箱』はまだ暖かい作品に思えた。 いやあ、ケッチャムは惨劇の天才だと思う。素晴らしい作家だ。でも、オススメは出来ません。
by kizurizm
| 2005-10-10 23:30
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