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2005年 11月 06日
● すごいタイトルだ。今日どんな映画を見たのと聞かれて、最近どんな映画が印象に残ったかと聞かれてこのタイトルを口にするのはちょっとした冒険だろう。
タイトルはあまりに斬新前衛でびっくりですよ。 ● 元禄というバブル時代、人々は繁栄を享受する一方で変態的な衝動に取り憑かれていた。そんな彼らを冷徹に見据える医者・玄達。 一話目はよくある話です。このお話に似た目にあった知り合いも私にゃあいます。要するにおぼこ娘が二枚目やくざ(イケメンホスト)に騙されて吉原に売られたうえに、やくざ者はヒロイン実の妹を喰っちゃていて、挙げ句に廓の追っ手に男ともどもかかって拷問死。さすがに拷問死までいかずとも、ウブな娘さんが体売るほど悪い男に熱をあげるっていうのは、今も昔もあるお話なのですよ。 でもそれだけじゃメロドラマだから、オカマのカルーセル麻紀が花魁役で脱ぎだすし、女騎馬戦はあるし、拷問シーンも緊縛ばっちりであると。でもまだこれはほんのジャブにすぎないわけであるわけだけども。 ● 異常性愛はここからだとばかりに、いきなり腰巻きいっちょうで小人をしばくお嬢さんから始まる第二話。異形の男に犯されないと快感を得られなくなってしまった大店の令嬢と、彼女を愛する手代のお話である。 お嬢様は病気なんだと手代は玄達のもとに診療を頼む。玄達は「そのような事例は西洋の医学書にもある」という。「そんなおなごが西洋にもおるんですかい?」と驚く手代。玄達は催眠術で娘のトラウマを暴く。このあたりの治療シーン、山風ぽくてかなりおいしい。実は玄達が一番狂っていそうだな疑惑が胸に浮かんでくる。 自分の思いの丈をぶつければ彼女は治るかもしれんという玄達の言葉に勇気づけられ、重きって告白する手代。しかしお嬢様は感動しつつも「この浮世絵の異人を連れてきて」と言いつけ、異人と濃厚な情交に耽りその音を手代に聞かせるのであった! まさに鬼畜! この所業にぷつっと何か肝心なものを切らせてしまった手代はついに恐るべき行為に及ぶ! 鬼畜なんだけど最後は綺麗にまとめてある。随所随所に人間ポンプだのが出てくるあたりが侮れない。 ● で、いよいよこれで決めてやるぜな第三話。『シグルイ』における忠長だの、『Y十M』における加藤明成だのの狂った所業の実写版が見たい今時の若者は、是非見るべきだ! しょっぱなから村娘を馬で引き摺って殺す。この命の二束三文ぶりよ! 理不尽である、封建制度である。 この馬鹿殿の渾身のアイディアを尽くした暴虐が始まる。赤い衣装を着せた女中が舞う中へ、角に火をつけた猛牛を放って殺させるというもの。やけに派手なBGMとあいまっていやな躍動感がある。 「牛は赤いものを見ると興奮するのじゃ、ほうら脱げ脱げえぇい!」 絶叫する殿。逃げまどい、ついには腹を割かれて絶命する女中たち。それでも飽きたらず弓矢を射る鬼畜な殿! うーん、すごいなこれは。 そんな中で何故か恍惚とした表情を浮かべる女中が一人。これはM女だと目星をつけたSの殿と彼女の愛欲にまみれた日々が始まる。 そんな中、愛妾の一人が狆とけしからぬ行為に及んでいたと知った殿は、彼女の全身に金粉を塗りたくるという所業に及ぶ。さらに愛妾は合わせ鏡の間に放置され死にかける。絶え絶えの息の下から「殿、新しい趣向で楽しませてさしあげまする……」と助命嘆願をする妾。殿はやっぱりエロいので、不機嫌になりつつそれを受け入れる。 半年後、玄達もいる前で殿、臨月のM女、妾の新たな趣向が始まった。妾は衝撃の事実を口にする。 「そのM女は殿の娘! 実の親子が造った腹子が、人間の顔をしているか畜生の顔か、ご覧になる勇気がおありか?」 殿はショックを受けたけれども、負けず嫌いなのか根っからおかしいのか、玄達に腹の子を出せと迫る。嫌がりつつも実は帝王切開に興味があったから、バッサリ斬ってしまう玄達(おい)。妊婦は即死、いかにも人形だけどともかく胎児は取り出される。だけども、足癖の悪い殿か誰かが燭台をひっくり返したもんだから火事に。 殿は完全におかしくなって何事か絶叫している。玄達は、赤子を胸にそれでも生きろとやけに爽やかな叫びを発しつつ道を駆け抜ける。ここで完の文字。シュール。 ● 見ている間は割と冷静になんだメロドラマじゃん、赤ん坊人形じゃんとか思っていたんだけど、見終えてじっくり噛みしめるとやっぱり異常だしおもしろいなと。 低予算らしいけど、俳優の演技もしっかりしているし、女優はちゃんと脱ぐし綺麗だし、セットも衣装も凝っているし、ちゃんとした作り。 えげつないシーンがなければ十分文芸的なところ、泣かせどころも絵になるシーンもあるところ、そして医学的洞察なんかは初期山風短篇ぽい世界観だし、いろんな意味で山風ファンには是非おすすめしたい。 こういう作品を今でも見たい自分と同世代に人間って結構いるはずなんだが、今時そういうのがないのは本当にもったいないと思う。自分は見られて運が良かった。 キャラ的にはやっぱり玄達だなと。この映画で一番まっとうなようで一番おかしいのはこの医者だ。
by kizurizm
| 2005-11-06 21:57
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